トレード手法を確立しておくことが重要な4つの理由
トレードを行う上で、自分のトレード手法を確立しておくことはとても大切です。
その理由は以下の3つです。
- 理由①:メンタルが安定しやすくなるから
- 理由②:安定した成果を出すには、トレード手法を一貫させることが重要だから
- 理由③:資金管理がやりやすくなるから
理由①:メンタルが安定しやすくなるから
メンタルの不安定さは、トレードのパフォーマンスに深刻な悪影響を与えかねません。
メンタルが安定しない状態では、感情に任せてポジションサイズを変えてしまったり、戦略とは関係ないタイミングで利食い・損切りを行ってしまったりします。
明確なトレード手法を持っていれば、目先の値動きにメンタルを乱されることなく、冷静なトレードを行うことができます。
理由②:安定した成果を出すには、トレード手法を一貫させることが重要だから
トレードでは、その時の思い付きでランダムにトレードを行うよりも、一貫した手法でトレードを行う方が、長期的な成績は安定且つ向上します。
十分に検証され期待値の高いトレード手法だったとしても、回数を重ねなければ想定していたような成果が得られないことは多々あります。
しかし、トレード回数を重ねていけば、そのトレード手法の期待値と成績が近しいものになっていきます。
もし、トレード手法を確立せずにランダムなトレードを続けていると、結果が安定せず、運や偶然に左右された成績となってしまいます。
また、ランダムなトレードの長期的な成績は、検証を済ませた期待値の高い手法に比べ、低くなりやすい傾向があります(資金管理やメンタル面の影響で)。
理由③:資金管理がやりやすくなるから
トレード手法を確立しデータを集めることで、資金管理が行いやすくなります。
確立したトレード手法を続けると、以下のような資金管理にとって重要なデータを集めることができます。
- 勝率
- リスクリワードレシオ
- 最大ドローダウン
- 利益率
このように、口座資金の増減に関するデータが把握できていれば、1度のトレードにおける損失許容額の適正値を算出しやすくなります。
例えば、検証結果から最大ドローダウンが60%と判明した場合、100万円あった口座資金が一時的に40万円まで減少したことを意味します。
もし、その最大ドローダウンが自分にとって許容範囲を超えている場合は、1度のトレードにおける損失許容額を引き下げるなど、資金管理の見直しが可能です。
他にも、勝率やリスクリワードレシオのデータを検証し、エントリー・利食い・損切りタイミングの改善を図ることで、より優位性の高い資金管理を行えるようになり、トレード技術の向上を図ることができます。
なお、トレード手法を確立していないトレーダーは、必要なトレードデータを収集し分析することが難しくなります。
トレード手法の作り方
ここからは、自分のトレード手法の作り方について順を追って解説していきます。
- 手順①:トレード手法を組み立てる
- 手順②:過去検証と改善を繰り返す
- 手順③:過去検証通りにリアル相場でトレードを行う
- 手順④:リアル運用のデータを集める
- 手順⑤:リアル運用の結果と過去検証を比較する
手順①:トレード手法を組み立てる
まずは、検証を行うトレード手法を組み立てます。
気になっている手法や基本的なテクニカル手法など、検証してみたい手法なら何でも構いません。
ただし、検証するトレード手法には以下の要素を含んでいる必要があります。
- 利用する時間足
- 通貨ペア
- エントリー条件
- 利食い・損切りルール
- 資金管理法
それそれの要素について詳しく解説していきます。
利用する時間足
どの時間足でチャート分析を行うかを決めておくことは重要です。
利用する時間足は、採用するトレードスタイルにって変わります。
以下は、トレードスタイルごとの一般的に利用されている時間足です。
【スキャルピング】
- 長期足:1時間足、4時間足(ファンダメンタルズも含めた直近の大まかな相場動向を把握)
- 中期足:5分足、15分足(エントリーする方向を判断する)
- 短期足:1分足、場合によってTickチャート(エントリータイミングを計る)
【デイトレード】
- 長期足:日足(ファンダメンタルズも含めた大きな相場動向を把握)
- 中期足:1時間足、4時間足(エントリーの方向や押し目・戻りなどを把握)
- 短期足:5分足、10分足、15分足(エントリータイミングを計る)
【スイングトレード】
- 長期足:週足(大局的な方向感を確認)
- 中期足:日足(ファンダメンタルズも含めたトレンドやエントリー方向を判断する)
- 短期足:1時間足、4時間足(エントリータイミングを計る)
【ポジショントレード】
- 長期足:月足(各国経済なども含めた長期の大局観を把握)
- 中期足:週足(ファンダメンタルズも含めた長期のトレンドやエントリー方向を判断する)
- 短期足:日足(エントリータイミングを計る)
なおトレードでは、エントリーと決済の際に利用する時間足を一致されるのが基本であることを覚えておきましょう。
通貨ペア
どの通貨ペアでトレードを行うかも、あらかじめトレード手法の中に組み込んでおきましょう。
通貨ペアによって値動きの特徴は異なり、トレンドが出やすいものもあれば、レンジ相場になりやすいものもあります。
さらに、通貨ペアごとに価格変動率(ボラティリティ)やスプレッドの幅にも違いがあります。
自分のトレード手法と相性の良い通貨ペアを見極め、可能な限り取引する通貨ペアを固定することをおすすめします。
エントリー条件
エントリー条件とは、ポジションを取る際に満たすべき条件のことで、優位性があると判断した条件を設定します。
トレードにおいては、エントリー条件を設定して、勝てる見込みのあるトレードに集中することが重要です。
エントリー条件の例としては以下のようなものがあります。
- 直近の高値・安値を更新した時に、更新した方向にエントリー
- ダウ理論でトレンドが発生している方向にのみエントリー
- 3本の移動平均線がパーフェクトオーダーの時にエントリー
- 比較的大きな値動きが発生しやすいロンドン市場とニューヨーク市場のみエントリー
このような条件はさまざまなものがあるため、相性のよさそうなものをいくつか組み合わせ、最終的なエントリー条件を設定していきましょう。
ただし、検証後に修正点を発見しやすくするために、エントリー条件を複雑にしすぎることは避けましょう。
利食い・損切りルール
利食いや損切りを行うタイミングも、あらかじめトレード手法の中で定義しておきましょう。
多くの経験不足なトレーダーは、含み益が出ると早すぎる利食いをしてしまったり、より大きな利益を狙ってポジションを長く保有しすぎたりします。
反対に、含み損が発生すると損失を確定させたくない心理が働き、損切りを後回しにしてしまう傾向があります。
あらかじめ利食いや損切りのタイミングを決めておけば、含み益でも含み損でも、感情に流されず冷静に決済判断を下しやすくなります。
資金管理法
資金管理法とは、資金を効率よく守りながら増やすための戦略であり、主に「リスクコントロール」を中心に構成されます。
トレードにおいては「資金管理だけで勝てる」という意見があるほど、重要なものになります。
資金管理法の中でも重要な「1度のトレードにおける損失許容額(資金率)」は一般的に総資金の1〜2%以内といわれています。
資金率が高いほど、口座資金の減少スピードは速いため注意が必要です。
トレードでは自分のトレード手法と相場の相性が悪い時期には、連敗が続くこともあるので、連敗後もトレードを続けられるような資金率に設定することが大切です。
手順②:過去検証と改善を繰り返す
トレード手法を組み立てたら、過去検証(バックテスト)を行います。
過去検証には、検証ソフトなどを使いましょう。
もし有料の検証ソフトが嫌な場合は、自分で用意した過去チャートと表計算ソフトなどを使いましょう。
ただし、時間がかかることや検証数をこなすのが大変なため、可能なら検証ソフトを使いましょう。
検証数は少なくとも数百以上は確保したいところです。
検証中は以下のようなデータを集めましょう。
- 合計トレード数
- 合計勝ちトレード数
- 合計負けトレード数
- 勝率
- 合計利益
- 合計損失
- 利益率
- 平均利益
- 平均損失
- リスクリワードレシオ
- 最大連続勝ちトレード数
- 最大連続負けトレード数
- 最大ドローダウン
検証ツールや取引ツールのバックテスト機能は、以上のデータを自動で集計してくれるものもあるので、有効活用しましょう。
検証データが集まったら改善を行いましょう。
改善の仕方はさまざまですが、一例を以下で紹介していきます。
なお、改善が済んだら、改善後のトレード手法を再度同じ期間の過去チャートで検証していきましょう。
この検証・改善の作業を納得いくまで行ってください。
勝率が低すぎ且つトータル収支がマイナスの場合
勝率が低すぎ(勝率:30%など)且つトータル収支がマイナスの場合は、エントリーや利食い損切り幅(利食い幅が広く損切り幅が狭い)が間違っている可能性があるため、このあたりを改善しましょう。
また、メンタル的に難しいかもしれませんが、真逆の方向にエントリーしていれば、圧倒的に勝っている可能性もあるので、真逆方向のエントリーも検討する価値はあります。
※トレード手法にもよりますが、数百以上検証して、勝率・負け率が圧倒的にどちらかに傾くことはあまりありません。(ナンピンによって無理やり勝率を上げている場合などを除く)
勝率は高いがリスクリワードレシオが低く、トータル収支がマイナスの場合
勝率は高いがリスクリワードレシオが低く、トータル収支がマイナスの場合、一般的にコツコツドカンといわれる負けパターンの可能性があります。
この場合、勝率を多少落としてでも、利食い幅を広げ損切り幅を狭めることでリスクリワードレシオの改善を図りましょう。
最大ドローダウンが極端に大きい
最大ドローダウンが極端に大きい場合は、1度のトレードにおける損失許容額(資金率)が大き過ぎる可能性があるため、ここを小さく設定し直しましょう。
当然のことながら、1度のトレードにおける損失許容額を小さくすれば、発生するドローダウンもそれだけ小さくなります。
下はその一例です。
連敗数 | 資金率2% | 資金率10% |
0 | 1,000,000 | 1,000,000 |
1 | 980,000 | 900,000 |
2 | 960,400 | 810,000 |
3 | 941,192 | 729,000 |
4 | 922,369 | 656,100 |
5 | 903,922 | 590,490 |
6 | 885,844 ドローダウン率:11% | 531,411 ドローダウン率:47% |
※ドローダウンとは、保有資産の最大値からの下落率を意味します。
※最大ドローダウンとは、ドローダウンの中で、最も下落幅(額)が大きいものを指します。
トレード回数が少なすぎる
トレード回数が少なすぎる場合は、エントリー条件が複雑になり過ぎている可能性があります。
この場合、エントリー条件に組み込まれている条件を減らすなどして、もう少し簡単なエントリー条件にしましょう。
利食い・損切りした後、一定時間後の値動きも確認しよう
トレード手法を検証していく場合、できれば「利食い・損切りした後、一定時間後の値動き」も確認しましょう。
利食いの一定時間後、さらに利益方向に伸びていくことが多い場合、利食いが早すぎる可能性があり、利食いを遅らせ利益を伸ばすことでリスクリワードレシオの改善を図れます。
また、損切りの一定時間後、利益方向に戻ってくることが多い場合(損切りしなければよかった?と思われる場合)は、エントリーポイントを変えることで改善が図れるかもしれません。
一例として、元々損切りを置いていた場所が、他の市場参加者の損切りと重なりやすい場所で、その損切りを付けされることで利益を上げようとする勢力に意図的にやられている可能性があります。
そういった場合、一旦多くの損切りがついた後、価格が戻ってくることが多々あります。
この場合、「価格が戻ってくるから損切りしなければいい」と思われるかもしれませんが、戻ってこなかった場合のダメージが大きくなるので、損切りをしないという選択肢は危険です。
そのため、損切りを変えるのではなく、そもそものエントリーポイントを変えてしまう方法があります。
損切りの一定時間後、価格が戻ってくることが多いのであれば、そこが本来入るべきエントリーポイントと考えることができます。
エントリー後、価格が戻っていく段階で利食いを行い、戻らない場合は、事前に決めておいた損切り条件で損切りを行いましょう。
(この例の場合、セリクラ・バイクラ後のリバ狙いのようなトレードになります。)
手順③:過去検証通りにリアル相場でトレードを行う
過去検証は、あくまで過去のチャート上での結果にすぎません。
たとえ過去検証で優れた成績を残していても、現在の相場で通用しなければ意味はありません。
したがって次は、少額のリアル口座やデモ口座を利用し、過去検証済みのトレード手法をリアル相場で検証していきましょう(フォワードテスト)。
なおリアル相場での運用は、必ず過去検証で用いたトレード手法を使用するようにしてください。
手順④:リアル運用のデータを集める
リアル運用をする際は、過去検証の時と同様に以下のデータを集めましょう。
- 合計トレード数
- 合計勝ちトレード数
- 合計負けトレード数
- 勝率
- 合計利益
- 合計損失
- 利益率
- 平均利益
- 平均損失
- リスクリワードレシオ
- 最大連続勝ちトレード数
- 最大連続負けトレード数
- 最大ドローダウン
ただしリアル運用には、過去検証では再現できない以下のような要素が存在しており、必然的にトレード成績を悪化させてしまいます。
- スリッページ
- スプレッドの急変動
- 突発的な値動き
過去検証はあくまでも、理論上の話であることを覚えておきましょう。
手順⑤:リアル運用の結果と過去検証を比較する
リアル運用の検証データが十分集まった時点で、過去検証の検証データと比較を行いましょう。
特に以下の4つの検証データを重点的に比較しましょう。
- 勝率
- リスクリワードレシオ
- 最大連続負けトレード数
- 最大ドローダウン
過去検証に近い結果が得られた場合は、リアル口座に実際の運用資金を入金して、本格的な運用を開始しましょう。
一方で、過去検証通りの結果が得られないこともあります。
例えば、過去検証時の最大連続負けトレードが「8連敗」であったのに対し、リアル運用での最大連続負けトレードが「16連敗」だったとします。
この場合、最大ドローダウンの大幅な悪化も予想されます。
このような比較結果は、トレード手法が現在の相場では機能しなくなってきていることを示唆しています。
こうした結果が得られ場合は、直ちにリアル運用と停止して、再度過去検証を行う必要があります。
以上がトレード手法の作り方になります。
トレード手法を作るうえでの注意点
トレード手法を作るうえでいくつかの注意点があります。
- 注意点①:検証中にトレード手法を修正しない
- 注意点②:なるべくシンプルなトレード手法にする
- 注意点③:勝率ばかりに注目しない
- 注意点④:過剰最適化(カーブフィッティング)を避ける
注意点①:検証中にトレード手法を修正しない
1つ目の注意点は、検証中にトレード手法を修正しないことです。
検証中には、
「このインジケーターの設定を変えれば、もっと利益が出そうだ」
「移動平均線を2本から3本にすれば、より正確に分析できるはず」
といった改善案が思い浮かぶことがあります。
しかし、検証の途中でトレード手法の内容を変更してしまうと、正確で一貫性のある検証データを得ることはできません。
また、十分なトレード回数をこなす前に検証を打ち切ると、その手法の実力を正しく評価することが難しくなります。
そのため、検証中に出てきた修正案はまずメモに残し、今の検証が完了してから改めて試すようにしましょう。
注意点②:なるべくシンプルなトレード手法にする
2つ目の注意点は、なるべくシンプルなトレード手法にすることです。
多くの勝てないトレーダーは、以下のような大きな誤解を抱きがちです。
- テクニカル分析は複雑で難しいほど効果的
- 複数の分析手法を組み合わせれば、より精度が高まる
- 簡単な手法では勝てない
しかし実際には、シンプルなトレード手法でも十分な成果が得られるものは多く存在します。
もし複雑なトレード手法にしてしまった場合、あるインジケーターが「買い」を示す一方で、別のインジケーターが「売り」を示すなど、矛盾が発生しやすくなります。
新たにトレード手法を作る際には、「トレード初心者でもすぐ実践できるか」を一つの目安にしましょう。
注意点③:勝率ばかりに注目しない
3つ目の注意点は、勝率ばかりに注目しないことです。
多くの勝てないトレーダーは、勝率の高さだけを基準にトレード手法の良し悪しを判断しがちです。
確かに、勝率は手法を評価するうえで重要な要素の一つですが、実際には勝率が低くても安定して利益を上げているトレーダーは少なくありません。
トレード手法を作る際は、勝率とリスクリワードレシオのバランスが重要だということを意識しましょう。
また、勝率とリスクリワードレシオから導き出される「期待値」にも注目しましょう。
期待値とは、1トレード当たりに期待できる利益のこと指し、以下の計算式で求めることができます。
期待値 =( 勝率 × リスクリワードレシオ )-( 負け率 × 1 ) |
例えば、「勝率:40%」「リスクリワードレシオ:2」のトレード手法の期待値は、
(0.4 × 2)-(0.6 × 1)= 0.2
以上の式から、期待値は0.2となります。
期待値がプラスなので、このトレード手法を使用していけば、利益が出ることを期待できます。
では、「勝率:70%」「リスクリワードレシオ:0.2」のトレード手法の期待値を求めてみましょう。
(0.7 × 0.2)-(0.3 × 1)= -0.16
このトレード手法は勝率70%とかなり高く、一見優れた手法に見えますが、期待値がマイナスなので、使用するほど損失が発生することになります。
以上のように、トレード手法を作る際は、勝率ばかりに注目するのではなく、勝率とリスクリワードレシオのバランスを意識し、「期待値」がプラスになることを重視しましょう。
注意点④:過剰最適化(カーブフィッティング)を避ける
4つ目の注意点は、過剰最適化(カーブフィッティング)を避けることです。