ストキャスティクスとは?

ストキャスティクスは、相場が「買われすぎ」や「売られすぎ」の状態にあるかどうかを示す、オシレーター系のテクニカル指標です。
「%K(パーセントK)」、「%D(パーセントD)」、「Slow%D(スローパーセントD)」といった複数のラインによって、相場の過熱度合いが0%〜100%の数値で表されます。
このストキャスティクスには、「ファーストストキャスティクス」と「スローストキャスティクス」という2つの種類があります。

ファーストストキャスティクスとは?
ファーストストキャスティクスでは、「%K」と「%D」の2本のラインを利用します。
%Kは対象期間の変動幅において現在の価格がどれくらいの位置にあるかを示す数値です。
例えば対象期間が9日間の場合、現在の価格が過去9日間で最も高い場合の%Kは100%、最も低い場合は0%となります。
%Dは%Kを単純移動平均化したものです。
ファーストストキャスティクスは、価格変動への反応が速いという特徴がある一方で、動きが過敏になりやすく、売買サインの信頼性が低下し「ダマシ」が多くなるという欠点もあります。
スローストキャスティクスとは?
スローストキャスティクスでは、「%D」と「Slow%D」の2本のラインを利用します。
%Dはファーストストキャスティクスにおける%Dと同じで、%Kを単純移動平均化したものです。
スローストキャスティクスにおける%Dを「Slow%K(スローパーセントK)」と呼ぶこともあります。
Slow%Dは、%Dを移動平均化したもの(つまり、%Kを移動平均化して、さらにそれを移動平均化したもの)です。
スローストキャスティクスは、価格の変動に対する反応は緩やかですが、その分売買サインの精度が高まり、ダマシが比較的少ない傾向にあります。
ファーストストキャスティクスとスローストキャスティクスはどちらを使うべきか?
ストキャスティクスでは、2つのラインのクロスから売買サインを読み取ります。
上記チャートでもわかるように、ファーストストキャスティクスは価格の変化に対して敏感に反応するため、チャート上では細かく上下に動く傾向があります。
そのため、ファーストストキャスティクスは波形が粗くなりやすく、ラインの交差が頻繁に起こることで、ダマシのサインが増えてしまう傾向にあります。
それに対して、スローストキャスティクスは反応が穏やかで、滑らかで安定したラインを描き、ダマシが少ないことが特徴です。
よって、一般的にはスローストキャスティクスの方がより多く利用されています。
ストキャスティクスの計算方法
ストキャスティクスの計算方法は下記のようになります。
- %K =(直近の価格 - 過去n日間の最安値)÷(過去n日間の最高値 - 過去n日間の最安値)× 100
- %D = %Kの単純移動平均
- Slow%D = %Dの単純移動平均
ストキャスティクスの期間設定(パラメーター)
ストキャスティクスの一般的な期間設定は下記のようになります。
- %K:9(5や14とする場合もあります)
- %D:3
- Slow%D:3
ストキャスティクスの使い方
ここからは、一般的に多く利用されているスローストキャスティクスの使い方について紹介いたします。
なお、ファーストストキャスティクスの場合は、%Dを%K、Slow%Dを%Dに置き換えれば同様の使い方ができます。
買いサイン(売られすぎ)
Slow%Dが0%~20%の低い水準にあるときは、相場が売られすぎの状態にあると考えられ、買いサインと判断します。
さらに、このゾーンで%DがSlow%Dを下から上に抜ける「ゴールデンクロス」が発生した場合は、より強い買いサインと見なされます。

売りサイン(買われすぎ)
Slow%Dが80%~100%の高い水準にあるときは、相場が買われすぎの状態にあると考えられ、売りサインと判断します。
さらに、このゾーンで%DがSlow%Dを上から下に抜ける「デッドクロス」が発生した場合は、より強い売りサインと見なされます。

ダイバージェンス
価格が上昇しているのにストキャスティクスは下落している、または価格が下落しているのにストキャスティクスは上昇しているといった、相場とストキャスティクスの方向性が逆行する現象をダイバージェンスといいます。
ダイバージェンスが発生すると、価格の上昇や下落の勢いが弱まっており、相場が反転する可能性があることを示しています。
このため、上昇局面でダイバージェンスが確認された場合は「売りサイン」、逆に下落局面で確認された場合は「買いサイン」と判断されます。

ストキャスティクスとRSIの違い
ストキャスティクスとRSIは、ライン形状がよく似ているうえに、ラインの水準によって「買われすぎ」や「売られすぎ」を判断するという点でも共通しています。
ただし、両者には異なる点もあります。
RSIはラインが「買われすぎ」や「売られすぎ」の水準にあるかどうかで判断するのに対し、ストキャスティクスは2本のラインのクロスによって、より明確な売買サインを捉えることができます。
そのため、RSIよりも判断しやすいとされることがあります。

上記チャートをみると、ストキャスティクスのほうが、RSIに比べて「売られすぎ」や「買われすぎ」のゾーンにラインが頻繁に入る傾向が見られます。
これは、両指標の計算方法の違いに起因しており、RSIは数値が30%〜70%の範囲内に収まりやすいのに対して、ストキャスティクスは20%~80%の範囲内に収まりづらいという特徴があります。
そのため、ストキャスティクスを使う際は、ラインが「売られすぎ」または「買われすぎ」の水準にあるかどうかだけでなく、ライン同士のクロスや、他の指標の動きも総合的に確認して判断することが大切です。
ストキャスティクスのデメリット
ストキャスティクスはレンジ相場で効果を発揮しやすい一方で、他のオシレーター系の指標と同様に、強いトレンドが発生している局面では上下の水準に張りついてしまい、正確な判断が難しくなる場合があるため注意が必要です。

ストキャスティクスと他のテクニカル指標を組み合わせたトレード手法
ストキャスティクスのデメリットをカバーするために、他のテクニカル指標を組み合わせるトレード手法があります。
ストキャスティクスとボリンジャーバンドを組み合わせたトレード手法
ストキャスティクスにボリンジャーバンドを組み合わせることで、トレードの精度を高めやすくなります。
ボリンジャーバンドは、単純移動平均線とその上下に配置されたバンドによって、価格の方向性や変動の大きさを視覚的に把握できるテクニカル指標です。
一般的にボリンジャーバンドの±2σの中に価格が収まる確率は、約95.4%といわれています。
よって、高い確率でボリンジャーバンドの±2σ内に価格が収まります。
また、ボリンジャーバンドのバンド幅が狭いスクイーズの状態は、トレンドの出ていないレンジ相場を示唆しており、この状況下でのストキャスティクスの信頼性は比較的高いといえます。
これらボリンジャーバンドの特性を利用して、ストキャスティクスの売買サインと組み合わせたトレードを行います。

上記チャートは、ボンジャーバンドのバンド幅が狭いスクイーズの状態でレンジ相場といえます。
この状況下で、価格がボリンジャーバンドの-2σを下抜け、その後ストキャスティクスが20%以下の売られすぎゾーンでゴールデンクロスしています。
その後価格は上昇しています。
また、価格がボリンジャーバンドの+2σを上抜け、その後ストキャスティクスが80%以上の買われすぎゾーンでデッドクロスする状況も発生し、その後価格は下落しています。
さらに上記チャートでは、ボリンジャーバンドのスクイーズでレンジ相場を確認できているため、ストキャスティクスが買われすぎゾーン・売られすぎゾーンに若干達していない状態でもゴールデンクロス・デッドクロスの売買サインの信頼性が高いことが確認できます。
また、ボリンジャーバンドの±2σを価格が抜けていなくても、ストキャスティクスのゴールデンクロス・デッドクロスの売買サインが機能していることが確認できます。
このように、ボリンジャーバンドのスクイーズでレンジ相場を確認できていれば、ストキャスティクスのみの売買サインでもトレードは可能であり、さらにボリンジャーバンドの±2σを価格が抜ける状況も合わせれば、より信頼性の高い売買サインと判断することができます。
ストキャスティクスまとめ
ストキャスティクスは、買われすぎ売られすぎといった相場の過熱感を分析するうえで有効な手段といえますが、絶対ではないため過信は禁物です。
そのため、ストキャスティクスを使った売買を行う場合は、損切り基準に達した時点でしっかりと損切りするようにしましょう。
また、誤った判断を避けるためには、他のテクニカル指標やファンダメンタルズ分析を併用し、複数の条件を照らし合わせながら総合的に判断することが大切です。

ストキャスティクスは、強いトレンドが出ていない状況で使うことをおすすめするワン。