ブレイクアウト戦略とは?
ブレイクアウト戦略とは、価格が重要なラインやチャートパターン(レンジ、三角保ち合い、フラッグ など)を抜けた後に発生する値動きを狙うトレード手法です。
「ブレイクアウト戦略=抜けた瞬間だけのトレード」と思われがちですが、実際には以下のように複数の狙い方があります。
- ブレイク直後の勢いに乗るトレード
- ブレイク後の急伸・急落からのリバウンドを狙うトレード
- ブレイクラインへの戻し(プルバック)からレジサポ転換を確認してエントリーするトレード
このように、ブレイクを軸にした複数のアプローチが存在するため、シンプルながら応用の幅が広い戦略といえます。
ブレイクアウト戦略が向いているトレードスタイル
ブレイクアウト戦略は、相場の勢いを利用するため比較的短期のトレードスタイルに向いています。
- スキャルピング
ブレイク直後の瞬間的な値動きを狙いやすいスタイル。 - デイトレード
ブレイク後のトレンド狙いやプルバック型エントリー(ブレイクラインへの戻しでエントリー)など、複数の戦略を組み合わせられる。 - 短期スイングトレード
明確なブレイクが起きると、その方向に数日間トレンドが続くことも多く、大きな波に乗る戦略として有効。
一方で、長期のポジショントレードにはあまり向きません。
なぜなら、ポジショントレードはチャート形状による短期的な値動きではなく、長期的なファンダメンタルズ(金融政策や経済成長 など)を根拠にするトレードスタイルだからです。
ブレイクアウト戦略のメリット・デメリット
ブレイクアウト戦略のメリット・デメリットについても理解しておきましょう。
【メリット】
- トレンドの初動を捉えやすい
- 明確なラインやパターンに基づくため、ルールがシンプル
- 「抜けた瞬間」「リバウンド」「プルバック」など多様なエントリー方法を選べる
【デメリット】
- ダマシへの対策が必要
- ブレイクを待つためトレード機会が限定される
- ブレイクの瞬間を狙う場合、相場に張り付いておく必要がある
ブレイクアウト戦略で意識すべきこと
ブレイクアウト戦略はシンプルに見えて、環境認識や事前準備が甘いと失敗の確率が高まります。
勝率を高め、リスクを抑えるために特に意識したいポイントを整理します。
① 時間帯やその市場の特徴を意識する
ブレイクアウトは「強い注文フロー」が一気に入ったときに発生しやすい現象です。
流動性の低い時間帯では一時的に値が飛んでも、そのまま失速してレンジに戻るケースが多く、ダマシを食らいやすくなります。
そのため、狙うなら以下のような「取引が活発な時間帯」が有効です。
【ブレイクアウト戦略向きの時間帯】
- ロンドン市場の序盤:17:00~19:00(標準時間)
ロンドン市場の序盤は、大きな値動きが出やすいためブレイクアウト戦略向きといえます。
ただし、19時を過ぎると市場参加者が昼休みに入るため、値動きは落ち着く傾向があるようです。 - NY市場の前半:21:00~25:00(標準時間)
標準時間だと22時からニューヨーク市場が始まりますが、その1時間前の21時から取引が活発になりはじめ、25時あたりまでは大きな値動きが出やすく、ブレイクアウト戦略向きの時間帯といえます。
この時間帯は、欧州勢と米国勢がともに参加する時間帯であることや重要な経済指標の発表も多いため、一日の中で最も取引が活発になります。
また、NYオプションカット(標準時間 24時前後)、ロンドンフィキシング(標準時間 25時前後)の時間帯は、これらのフローにより値動きが活発になる傾向があります。
反対に以下の時間帯は、比較的値動きが緩やかになるため、ブレイク戦略には不向きといえます。
【ブレイクアウト戦略が向かない時間帯】
- ウェリントン・シドニー市場の前半:5:00~8:00(標準時間)
この時間帯は、流動性が低く大きな値動きは出づらい一方で、急な相場変動には注意が必要という特徴があります。
ですが基本的にこの時間帯は、ブレイクアウト戦略には不向きといえます。 - 東京市場(一部の時間帯を除く):8:00~9:00、10:00~15:00
東京株式市場の始まる9時から仲値が決定される9時55分の前後の時間帯は、値動きが活発になりやすいため、状況によってはブレイクアウト戦略向きともいえます。
ただし、これ以外の時間帯、特に東京株式市場の前引け(11:30)から大引け(15:30)までの時間帯は、比較的値動きが緩やかでブレイクアウト戦略には不向きといえます。
また、15:00~16:00の時間帯は、欧州が夏時間の場合、アーリーロンドンの参加者がいることや欧州圏の経済指標の発表があるなど、状況によってはブレイクアウト戦略向きともいえます。 - NY市場の後半:25:00以降(標準時間)
NY市場の25時以降(標準時間)は、値動きが落ち着いてくる傾向があるため、あまりブレイクアウト戦略向きではありません。
ですが、突発的な材料が入ってくることもあるため、そういった場合はブレイクアウト戦略が機能することもあります。
② 経済指標・要人発言・イベントを意識する
米雇用統計や米CPI、FOMCなどのビッグイベントは、大きなトレンドを生み出す「ブレイクの引き金」になります。
テクニカル的な水準(高値・安値・レジサポライン など)が意識されている場面で指標発表が重なると、一気に注文が殺到してブレイクが成立しやすくなります。
ただし、発表直後はスプレッド拡大や乱高下が起こりやすいため、即飛び乗るのではなく「初動を確認してからエントリー」「ワンクッション待ってプルバックでエントリー」などの戦略も有効です。
③ 通貨強弱差を意識する
ブレイクアウト戦略では、通貨強弱差を意識することも重要です。
例えばドルが全面高、円が全面安というように通貨強弱差大きい場面では、ブレイク後に素直に値が走りやすくなります。
逆に通貨強弱差が小さい場面では、ブレイクしても値が伸びづらく、元の水準に戻してダマシとなるケースが多々あります。
そのため、トレード前にFX会社で提供されている通貨強弱チャートなどを使い、通貨強弱を把握することが大切です。(通貨強弱チャートが見れない場合は、最低でも3通貨ペアを比較することで、ある程度の通貨強弱は把握できます)
④ 損切り基準を明確にしておく
ブレイクアウト戦略は、エントリーの仕方によってリスクの特徴が変わります。
どのパターンを選んでも共通するのは「損切り基準を事前に決めておくこと」ですが、具体的には以下のように考えられます。
ブレイク直後の勢いに乗るエントリー
このタイプは非常にダマシが多いため、その対応が重要です。
- ブレイク前の水準に戻したら損切り
- 1度のトレードにおける損失許容額に達したら即損切り
ブレイク後の急伸・急落からのリバウンドを狙う逆張りエントリー
一方向に走った相場は急反転(リバウンド)することがあります。
この動きを狙う逆張り型は、タイミングを誤るとトレンドに逆らって大きな損失になりかねません。
リスク管理のポイントは以下のようになります。
- リバウンド狙いのエントリーは、タイミングが難しいため分割エントリーするのも一つの手。
- リバウンドせず、1度のトレードにおける損失許容額に達したら即損切り
- リバウンドしたが平均取得価格以上には戻らない場合、見切りをつけて損切り
この場合の損切り判断は、メンタル面も含め、何かしらの根拠を持っていないと非常に難しい。例として、プライスアクションを見て判断する、もしくはフィボナッチリトレースメントを引いて戻りの目途を判断するなど。
ブレイクラインへの戻し(プルバック)からレジサポ転換を確認してのエントリー
最も堅実とされるのがこのパターンです。
ブレイクラインがレジサポ転換として機能するかどうかを確認してから入るため、リスクをコントロールしやすい特徴があります。
ただし注意点は、ラインを割り込んでしまった場合です。
- ラインを明確に割ったら損切り
- 1度のトレードにおける損失許容額に達したら即損切り
ブレイクの見極め方
ブレイクアウト戦略の成否を分けるのは、「本当にブレイクしたのかどうか」を見極められるかどうかにかかっています。
ダマシに振り回されないためにも、正しい判断基準を持つことが重要です。
① ラインやパターンの判定
- 何度も反発している高値・安値などに引いた水平線
- レンジの上下限に引いた水平線
- チャートパターン(三角保ち合い、フラッグ、ペナント、ウェッジ など)のレジスタンスライン・サポートライン
② 典型的なダマシ
- ヒゲだけ抜けて終値で戻る
- ブレイクラインへ戻してきたものの、レジサポ転換とならずラインを割り込んでしまう
- 「流動性が低い時間帯」や「通貨強弱差が小さい」とダマシが発生しやすくなる
③ ブレイク確定の判断(ダマシ対策)
- ブレイク後、足の確定を待ち、終値ベースでブレイクを判断する
- ブレイクラインへ戻して来たら、終値ベースでしっかりレジサポ転換を確認する
- 「値動きが活発な時間帯」や「大きな通貨強弱差」などでブレイクの信頼性を高める
- 終値確定を待たずにエントリーする場合は、事前に決めた損切りルールを徹底する
ブレイクアウト戦略の一連の流れ
ここからは、実際のチャートをもとに「ブレイクアウト戦略の一連の流れ」を解説していきます。
① ブレイク直後の勢いに乗るトレード(スキャルピング)


上記は、同時間帯の「米ドル/円 5分足 1分足 チャート」です。
このチャートを使い、スキャルピングでの「ブレイク直後の勢いに乗るトレード」の解説をしていきます。
【時間帯・市場の特徴】
- 東京市場 9時台:東京市場の中では比較的値動きの大きな時間帯でブレイクアウト戦略向きといえる。
- チャート上のエントリーの位置 9:51 は、仲値が決定する9:55に近く、この時間になると値動きが荒れやすくスプレッドも開く傾向があるため、スキャルピングには注意すべき時間帯。
【経済指標・イベント】
- この時間帯に目立った経済指標・要人発言・イベントなどはない
- そのため、経済指標やイベントによるこの時間帯の大きな値動きは発生しづらい
【通貨強弱差】
- 米ドルと円の通貨強弱差は、あまり大きくない
【トレード解説】
- エントリー
・9:51に147.390で飛び乗りのショートエントリー(理由は以下の通り)
・5分足でダブルトップのネックラインを下抜けた。
・1分足で「何度も下支えされていた水平線147.411」と「その下のキリのいい147.400」を下抜けた。 - 利食いの考え方
・スキャルピングなので、利が乗ったらプライスアクションなどを見て素早く利食い。 - 損切りの考え方
・基本は、147.411の水平線の上に戻したら損切り。
・もしくは、1度のトレードにおける損失許容額に達したら即損切り。 - 結果
・9:54に147.327で利食い、利益は6.3pips(利食いの理由は以下の通り)
・上記1分足チャートの9:54の足が、下ヒゲの長い陽線で確定しそうで、リバウンドの可能性がある。
・9:55は仲値の決定時間であり、「値が荒れる」「スプレッドが開く」などの危険性があるため、その前に利食いを行った方がいいと判断。
② ブレイク後の急伸・急落からのリバウンドを狙うトレード(スキャルピング)

上記は、「米ドル/円 1分足 チャート」です。
このチャートを使い、スキャルピングでの「ブレイク後の急伸・急落からのリバウンドを狙うトレード」の解説をしていきます。
【時間帯・市場の特徴】
- 東京市場 9時台:東京市場の中では比較的値動きの大きな時間帯でブレイクアウト戦略向きといえる。
- チャート上のエントリーの位置 9:54 は、仲値が決定する9:55に近く、この時間になると値動きが荒れやすくスプレッドも開く傾向があるため、スキャルピングには注意すべき時間帯。
【経済指標・イベント】
- この時間帯に目立った経済指標・要人発言・イベントなどはない
- そのため、経済指標やイベントによるこの時間帯の大きな値動きは発生しづらい
【通貨強弱差】
- 米ドルと円の通貨強弱差は、あまり大きくない
【トレード解説】
- エントリー
・9:51に1分足で「何度も下支えされていた水平線147.411」を下抜けて、価格が下に走る状況となった。
・1分足チャートの9:54の足が、下ヒゲの長い陽線で確定しそうで、リバウンドの可能性があると判断し、147.359でロングエントリー。(ただし、9:55の仲値決定で「値が荒れる」「スプレッドが開く」などのリスクがあるので注意が必要) - 利食いの考え方
・リバウンドで「下抜けた水平線147.411」まで戻ると、レジサポ転換で落とされる可能性があるため、その手前までには利食いを行う。
・水平線まで戻らずともプライスアクションなどで利食うべきと判断した場合は、速やかに利食いを行う。 - 損切りの考え方
・リバウンドは起きたが利食いし損なった場合、プライスアクションなどで損切りすべきと判断した時に即損切りを行う。
・「利食いし損ない下落した場合」や「リバウンドが起こらず下落した場合」は、「ロングエントリーした足の安値147.280」を下回った時点で損切りを行う。 - 結果
・ロングエントリー後、リバウンドは発生した。
・下抜けた水平線の少し手前までリバウンドしたものの、「上ヒゲの足が2本続いたこと」、「その次の足(上記チャートの利食いの足)で前の足の安値を下回ったこと」を判断材料に、174.359で利食いを実施。
・利益は3.2pips。
③ ブレイクラインへの戻し(プルバック)からレジサポ転換を確認してエントリーするトレード(デイトレード)

上記は、「米ドル/円 1時間足 チャート」です。
このチャートを使い、デイトレードでの「ブレイクラインへの戻し(プルバック)からレジサポ転換を確認してエントリーするトレード」の解説をしていきます。
【時間帯・市場の特徴】
- レンジ上抜け時(2:00)
・流動性が低くなり、比較的緩やかな値動きの時間帯
・ただし、突発的な値動きには注意が必要 - ロングエントリー時(15:00)
・15時台は欧州が夏時間のためアーリーロンドン勢もおり、多少値動きが活発な時間帯
【経済指標・イベント】
- レンジ上抜け時(2:00)
・2:00「米5年債入札」
・2:05「クックFRB理事発言(投票権あり)」「デイリー・サンフランシスコ連銀総裁発言(投票権あり)」
・上記材料により、レンジ上限の「156.960」とその直上のラウンドナンバー「157.000」を上抜け - ロングエントリー時(15:00)
・15:00 独GfK消費者信頼感調査
【通貨強弱差】
- レンジ上抜け時(2:00)
・米ドルと円の通貨強弱差は、あまり大きくない - ロングエントリー時(15:00)
・米ドルと円の通貨強弱差は、あまり大きくない
【トレード解説】
- エントリー
・2時台のレンジ上抜けからしばらく上で推移していたものの、15時台にレンジ上限のラインまで戻し、一時下抜けたが、すぐにヒゲを引いて上へ戻したシーン。
・ここで、レジサポ転換が確認できたため、157.000~157.100の間でロングエントリー。
・なお、1分足や5分足の短期足を見れば、1時間足の終値確定を待たずともレジサポ転換が確認でき、早めのエントリーは十分可能な状況であったといえる。 - 利食いの考え方
・利食いは、デイトレ目線でいくつかのシナリオが考えられる。
・上記1時間足チャートで直近高値の157.400の手前で利食い。
・この日のNY市場での重要経済指標等のイベントは、26時まで目立ったものがないため、その時間帯までトレール注文などを使い利益を伸ばすのも一つの手。
・長く保有したとしてもデイトレのため、基本として日をまたがずに利食いを行う。 - 損切りの考え方
・基本レンジ上限ラインの156.960を終値ベースで下抜けたら損切り
・終値まで待たず損切りする場合は、短期足を見て判断。 - 結果
・ロングエントリー後、一時的に横ばいとなったものの、その後は上昇していったため、利食いシナリオのどのパターンでも利食えていた可能性が高い。
【ブレイクアウト戦略】まとめ
ブレイクアウト戦略は「相場の転換点」を捉えるシンプルかつ強力な手法です。
「ブレイク直後の勢いに乗る」「リバウンドを狙う」「戻りを待つ」、どのアプローチでも共通して大切なのは、チャート形状だけでなく、相場環境を総合的に捉えることです。
そして、明確な根拠と損切り基準を持つことができれば、長期的な成績につながります。

総合的に相場環境を捉えることもすごく大事だワン。