トレンドフォロー戦略とは?
トレンドフォロー戦略は、相場のトレンドに沿ってエントリーする王道の戦略です。
「Trend is your friend(トレンドは友達)」という格言があるように、世界中のトレーダーが意識している基本的かつ有効な戦略です。
トレンドフォロー戦略が向いているトレードスタイル
トレンドフォローは王道の戦略であるため、ほとんどのトレードスタイルに向いているといえます。
- スイングトレード:数日~数週間の大きな波を狙いやすい
- デイトレード:日中の強いトレンド相場で有効
- スキャルピング:スキャルでも使えるがダマシが多く、難易度は高め
トレンドフォロー戦略のメリット・デメリット
トレンドフォロー戦略にもメリット・デメリットがあるため、押さえておきましょう。
【メリット】
- 比較的大きな値幅を狙える
- シンプルで理解しやすく、再現性が高い
- 初心者でも取り組みやすい
【デメリット】
- レンジ相場では機能しない
- トレンド転換を見誤ると損失が大きくなる可能性がある
- トレンド転換がいつ起こるのかわからないため、精神的にエントリーしづらい場合がある
- エントリー次第で、ダマシに合う可能性がある
- 押し目・戻りを待ちすぎると乗り遅れることもある
トレンドの見極め方
トレンドフォロー戦略では、まず相場にトレンドが発生しているかを判断することが重要です。
トレンドを見極めていくには、以下の方法などがあります。
- ダウ理論
- 移動平均線(MA)
- トレンドライン
- MACD
- ボリンジャーバンド
- 一目均衡表
なお、自分のトレードスタイル(スキャルピングやスイングトレードなど)に合った時間軸で相場のトレンドを見極めることが重要です。
詳しくは、【トレード前の環境認識】をご覧ください。
ダウ理論を使ったトレンドの見極め方
ダル理論の基本法則の一つに「トレンドは明確な転換シグナルが出るまで継続する」というものがあります。
この基本法則を使ったトレンドの見極め方を紹介します。

上昇トレンド:高値・安値が切り上がっている

下降トレンド:高値・安値が切り下がっている
移動平均線(MA)を使ったトレンドの見極め方
移動平均線(MA)を使ったトレンドの見極め方は以下の通りです。

上昇トレンド:移動平均線が上向き、価格が移動平均線の上にある

下降トレンド:移動平均線が下向き、価格が移動平均線の下にある
トレンドラインを使ったトレンドの見極め方
トレンドラインを使ったトレンドの見極め方は以下の通りです。

上昇トレンド:安値同士を結んだサポートラインが右肩上がり

下降トレンド:高値同士を結んだレジスタンスラインが右肩下がり
その他のトレンドの見極め方
【MACD】
上昇トレンド:ヒストグラムが上に伸びている
下降トレンド:ヒストグラムが下に伸びている
【ボリンジャーバンド】
上昇トレンド:エクスパンション → +2σのバンドウォーク
下降トレンド:エクスパンション → -2σのバンドウォーク
【一目均衡表】
上昇トレンド:基準線が上向き、基準線の上に価格がある、雲の上に価格がある
下降トレンド:基準線が下向き、基準線の下に価格がある、雲の下に価格がある
エントリー方法
トレンドを確認し、相場に上昇・下降トレンドがあると判断した場合は、トレンドフォロー戦略をベースとしたトレードを行っていきましょう。
トレンドフォロー戦略では、大きく分けて以下の2つのエントリー方法があります。
- 押し目買い(上昇トレンド)・戻り売り(下降トレンド)のエントリー
- トレンド中の保ち合い・レンジをブレイク後エントリー
押し目買い(上昇トレンド)・戻り売り(下降トレンド)のエントリー
押し目買い(上昇トレンド)・戻り売り(下降トレンド)のエントリーとは、トレンド方向に対して、一時的な調整(押しや戻り)が入った場面を狙ってエントリーすることをいいます。
- 上昇トレンド:一時的に下落しても、移動平均線やトレンドラインで支えられた後に反発する場面を押し目買い。
- 下降トレンド:一時的に上昇しても、移動平均線やトレンドラインで抑えられた後に下落する場面を戻り売り。
押し目・戻りの判断に役立つテクニカル手法には、以下のようなものがあります。
- 移動平均線
- トレンドライン
- フィボナッチ・リトレースメント
移動平均線を使った押し目買い・戻り売りエントリー
移動平均線を使った押し目買い・戻り売りエントリーは以下の通りです。

上記チャートは、上昇トレンド中の一時的な下落後、25SMAに支えられ、反発したところで押し目買いを行う場合の一例です。

上記チャートは、下降トレンド中の一時的な上昇後、25SMAに抑えられ、反落したところで戻り売りを行う場合の一例です。
トレンドラインを使った押し目買い・戻り売りエントリー
トレンドラインを使った押し目買い・戻り売りエントリーは以下の通りです。

上記チャートは、上昇トレンド中の一時的な下落後、サポートライン(トレンドライン)に支えられ、反発したところで押し目買いを行う場合の一例です。

上記チャートは、下降トレンド中の一時的な上昇後、レジスタンスライン(トレンドライン)に抑えられ、反落したところで戻り売りを行う場合の一例です。
フィボナッチ・リトレースメントを使った押し目買い・戻り売りエントリー
フィボナッチ・リトレースメントを使った押し目買い・戻り売りエントリーは以下の通りです。

上記チャートは、上昇トレンド中の一時的な下落後、フィボナッチ・リトレースメントの38.2%に支えられ、反発したところで押し目買いを行う場合の一例です。

上記チャートは、下降トレンド中の一時的な上昇後、フィボナッチ・リトレースメントの61.8%に抑えられ、反落したところで戻り売りを行う場合の一例です。
トレンド中の保ち合い・レンジをブレイク後エントリー
強いトレンド中に一時的に保ち合い・レンジになることがあります。
この保ち合い・レンジをトレンド方向に抜けた(ブレイクした)ところは、新たなトレンド方向への大きな動きが出やすいため、エントリーチャンスになります。
保ち合い・レンジのブレイクの確認に役立つテクニカル手法には、以下のようなものがあります。
- 水平線:レンジ(ボックス)の上限・下限に水平線を引く
- チャートパターン:三角保ち合い、ペナント、フラッグ、ウェッジなどのブレイクの確認に使える
なお、保ち合い・レンジをトレンド方向に抜けた場合のエントリー方法は、主に2つあります。
- 即エントリー型:レンジをブレイクしたと判断した後、すぐにトレンド方向へエントリーする。
- プルバック型:ブレイクし価格がトレンド方向に行った後、一度ブレイクしたラインまで戻してくる動きを待ち、レジサポ転換を確認してからエントリーする。

上記は、上昇トレンド中に保ち合い・レンジが発生した場合の 米ドル/円 1時間足チャート です。
トレンド中の保ち合い・レンジをブレイクした後のエントリー方法として、チャート内の①~④の状況を見ながら解説していきます。
なお、これらの状況における利食い・損切りについては、記事後半の「決済の考え方」の項目内で詳しく解説します。
① 即エントリー型
レンジをトレンド方向に上抜けしているので、抜けた直後に即ロングエントリーする方法が考えられます。
ただしこの時は、上ヒゲを引いて終値ベースでレンジ内に戻してしまっているので、結果的に「ダマシ」という形になりました。
② 即エントリー型
再度、レンジをトレンド方向に上抜けしてる状況です。
今回は終値ベースで上抜けしているので、①より信頼性は高いと考えられます。
レンジ上限上抜けの判断は、「抜けた瞬間」でするのか「終値ベース」でするのかは、その時々や個人の判断によりますが、②の場合、抜けたと判断した後すぐにロングエントリーしていきます。
③ 一時的にレンジ内に戻してきたシーン
②で終値ベースでレンジ上限を上抜けたものの、③の足では一時的にレンジ内に戻してきています。
ただし、終値ベースではレンジの上に戻っています。
こういった場合の判断は、記事後半の「決済の考え方」の項目内で詳しく解説します。
④ プルバック型エントリー
③以降価格が上昇していき、その後④でレンジ上限まで戻してきています。
ここでレンジ上限のラインがレジサポ転換となり、再度上昇する可能性が考えられるため、このタイミングでロングエントリーをしていきます。
以上が、トレンド中の保ち合い・レンジをブレイク後のエントリー方法になります。
決済の考え方、利食い・損切り方法
ここからは、トレンドフォロー戦略における決済の考え方について解説していきます。
ただし、利食い・損切りといった決済は、資金管理の観点からエントリー時にすでに考えておくべきことなので、この項目では、エントリー・利食い・損切りの一連の流れを見ながら解説していきます。
パターン①:移動平均線で押し目買い(上昇トレンド)エントリーした場合の決済

【エントリー(ロング)】
- 根拠:25SMAが上向きで価格がその上にあり、高値・安値が切り上がっているため「上昇トレンド」と判断。
- エントリーポイント:価格が一時的に25SMAまで下げて反発した場面(画像内の押し目買いポイントの位置)でロングエントリー。
【利食い】
いくつもの利食い方法があるため、その時々で判断する。
- 利益方向に抵抗帯などがある場合はその手前で利食い。
- 25SMAがサポートとして機能している間はホールドという手もあり。
- 直近の高値・安値を切り下げて、トレンド転換の可能性がある場合に利食い。
- トレール注文を使い、利益を伸ばし続けることも一つの手。
- 市場への影響の大きい経済指標発表など、イベントの前に利食い。
【損切り】
- 基本として、25SMAを終値ベースで下抜けた場合は損切り。
- 直近の安値を下回った場合、損切りする方法もあり。
- 損切りした後、もう一度上向きの25SMAを上抜けた場合にロングエントリーし直すことも検討(グランビルの法則)。
【まとめ】
押し目買いで引き付けてエントリーしているため、損切りまで距離が短く、利食いまでの距離は長くなりやすい傾向があります。
そのため、リスクリワードレシオが高くなりやすく、その反面、勝率が低くなり過ぎないように注意する必要があります。
上記チャートは、上昇トレンド中の押し目買いのパターンでしたが、下降トレンド中の戻り売りの場合も、方向は逆ですが基本的な考え方は同じです。
パターン②:トレンドラインで押し目買い(上昇トレンド)エントリーした場合の決済

【エントリー(ロング)】
- 根拠:安値同士を結んだサポートライン(トレンドライン)が右肩上がりのため「上昇トレンド」と判断。
- エントリーポイント:価格が一時的に下落し、サポートラインに支えられて反発した場面(画像内の押し目買いポイントの位置)でロングエントリー。
【利食い】
いくつもの利食い方法があるため、その時々で判断する。
- 利益方向に抵抗帯などがある場合はその手前で利食い。
- 価格がサポートラインを割らない限りはホールドという手もあり。
- 直近の高値・安値を切り下げて、トレンド転換の可能性がある場合に利食い。
- トレール注文を使い、利益を伸ばし続けることも一つの手。
- 市場への影響の大きい経済指標発表など、イベントの前に利食い。
【損切り】
- 基本として、価格がサポートラインを割ったら損切り。
- 直近の安値を下回った場合、損切りする方法もあり。
【まとめ】
押し目買いで引き付けてエントリーしているため、損切りまで距離が短く、利食いまでの距離は長くなりやすい傾向があります。
そのため、リスクリワードレシオが高くなりやすく、その反面、勝率が低くなり過ぎないように注意する必要があります。
上記チャートは、上昇トレンド中の押し目買いのパターンでしたが、下降トレンド中の戻り売りの場合も、方向は逆ですが基本的な考え方は同じです。
パターン③:フィボナッチ・リトレースメントを使い、戻り売り(下降トレンド)エントリーした場合の決済

【エントリー(ショート)】
- 根拠:25SMAが下向きで価格がその下にあり、高値・安値が切り下がっているため「下降トレンド」と判断。
- エントリーポイント:価格が一時的に上昇し、フィボナッチ・リトレースメントの61.8%に抑えられて反落した場面(画像内の戻り売りポイントの位置)でショートエントリー。
【利食い】
いくつもの利食い方法があるため、その時々で判断する。
- 利益方向に抵抗帯などがある場合はその手前で利食い。
- 下降トレンドの判断に使った25SMAを価格が上回ったら利食い。
- 直近の高値・安値を切り上げて、トレンド転換の可能性がある場合に利食い。
- トレール注文を使い、利益を伸ばし続けることも一つの手。
- 市場への影響の大きい経済指標発表など、イベントの前に利食い。
【損切り】
- 下降トレンドの判断に使った25SMAを価格が終値ベースで上回ったら損切り。
- 直近の高値を上回った場合、損切りする方法もあり。
【まとめ】
戻り売りで引き付けてエントリーしているため、損切りまで距離が短く、利食いまでの距離は長くなりやすい傾向があります。
そのため、リスクリワードレシオが高くなりやすく、その反面、勝率が低くなり過ぎないように注意する必要があります。
上記チャートは、下降トレンド中の戻り売りのパターンでしたが、上昇トレンド中の押し目買いの場合も、方向は逆ですが基本的な考え方は同じです。
パターン④:保ち合い・レンジをブレイク後エントリーした場合の決済

上記チャートの場合、エントリーポイントがいつくもあるため、エントリーポイントごとに利食い・損切りも解説していきます。
【①でエントリーした場合(即エントリー型)】
上記チャートは 米ドル/円 1時間足チャートです。
①の足(11時台)で一時的にレンジを上抜けているので、抜けた直後にロングエントリーしたとします。
ただしこの時は、上ヒゲを引いて終値ベースでレンジ内に戻してしまっているので、結果的に「ダマシ」という形になりました。
この場合の対応としては、以下の2つが挙げられます。
- 終値ベースでレンジ内に戻したことが確定した時点で損切りを行う。
この場合、損切り幅が小さくなるメリットがあります。 - 終値ベースでレンジ内に戻したことが確定しても損切りを行わない。
理由としては、「レンジ下限を下抜けていない」「上向きの25SMAを下抜けていない」などが挙げられます。
ただし、もし価格が下落していった場合、「レンジ下限を下抜け」or「上向きの25SMAを下抜け」で損切りを行うことになるので、損切り幅が大きくなります。
そのため、リスクリワードの観点から、利益幅も大きくとる必要が出てきます。
今回の場合、①でロングエントリーしたとしても、途中で損切りを行わなければ、結果として利食いを行うことができた可能性が高いといえます。
また、判断によっては今回の①の「ダマシ」を避けることができたかもしれません。
理由は以下になります。
- レンジを上抜けた時間が11時台で、東京市場のここからの時間帯は比較的流動性が低く、トレンドが出づらい。
- 一本前の足である10時台も長めの陽線で上昇しているため、さらなる買いが出続けるかは疑問。
- これらの理由から、11時台の足が確定するまでエントリーを待つことはできた可能性があり、そうすればダマシを避けられたといえる。
【②でエントリーした場合(即エントリー型)】
②は15時台の足になります。
今回は終値ベースで上抜けしているので、①より信頼性は高いと考えられます。
そのため、②でロングエントリーすることは十分可能です。
ただし、もう少しすると16時でロンドン市場が始まるため、注意すべき時間帯ともいえます。
【③一時的にレンジ内に戻したシーン】
16時にロンドン市場が始まり、一時的にレンジ内に戻してきています。
ここまでにロングエントリーしている場合、損切りも視野に入り始めます。
しかし、「レンジ下限を下抜けていない」or「上向き25SMAを下抜けていない」ので16時台の足が確定するまで損切りを待つことは十分にできます。
もし待っていた場合、結果として終値ベースでレンジを上抜けしており、その後も上昇しているため、利食いできた可能性は高いといえます。
【④でエントリーした場合(プルバック型エントリー)】
③以降価格が上昇していき、その後④でレンジ上限まで戻してきています。
ここでレンジ上限のラインがレジサポ転換となり、再度上昇する可能性が考えられるため、このタイミングでロングエントリーすることは有効的です。
また、④の足は22時台で、この日のこの時間帯に大きな経済指標の発表などはないため、より安心してエントリーすることができたといえます。
その後、価格は上昇していっているので、もしここまでにロングエントリーしていた場合、利食いできた可能性は高いといえます。
【まとめ】
今回のチャートでは、複数のエントリーポイントが存在しており、それぞれにメリット・デメリットがありました。
①のように「抜けた瞬間に飛び乗る」エントリーは、ダマシに遭うリスクがある一方、うまくいけば初動から利益を伸ばせます。
②のように「終値でブレイクを確認してから入る」エントリーは、信頼性が高く、比較的安全性のある選択肢です。
③のように「一時的なレンジ内戻り」を見た場合は、損切りを検討しつつも、レンジ下限や25SMAを割らない限りはホールドでき、その後の上昇を利益に変えることができます。
④のように「ブレイク後のプルバック」を待ってからエントリーする形は、リスクを抑えつつトレンドフォローできる典型的なエントリーパターンです。
つまり、どのタイミングで入るかによって、その後の対応は大きく変わってきます。
そのため、自分のトレードスタイルや時間帯(東京・ロンドン・NY市場などの特性)を踏まえたうえで、どのパターンを狙うかをよく検討し、エントリーを行いましょう。
【トレンドフォロー戦略】まとめ
トレンドフォロー戦略は、「流れに逆らわず相場の方向性に乗る」というシンプルかつ王道の手法です。
ダウ理論・移動平均線・トレンドラインなどを使い、トレンドを的確に見極めた上で「押し目買い・戻り売り」、あるいは「ブレイクアウト」を狙うことが基本となります。
メリットは、「大きな値幅を狙える点」や「再現性が高い点」にあり、デメリットは「ダマシ」や「レンジ相場では機能しない点」などがあることです。
そのため、利食い・損切りルールをあらかじめ決め、「リスクリワードレシオと勝率のバランス」を意識したトレードを行うことが重要です。
結局のところ、トレンドフォロー戦略は「シンプルだが奥が深い」手法です。
多くのプロトレーダーも活用している王道の戦い方なので、「自分のトレードスタイル」に合った形で実践し、経験を積みながら精度を高めていくことが成功のカギになります。

トレンドフォロー戦略をうまく活用できれば、非常に強い武器になります。