どれだけ優れたトレード戦略を持っていても、感情に飲まれてしまえば、トレードは破綻します。
FXでは、トレード戦略以前に、メンタルが崩れないことが重要です。
このパートでは、トレード心理の基本から、メンタル崩壊の原因、対策など、メンタル管理の行い方を解説していきます。
トレード心理の基礎知識
トレード中に現れる心理を理解することは、メンタル管理の基本となります。
「損失回避バイアス」と「プロスペクト理論」
人間は本能的に「得よりも損を強く感じる」生き物です。
これを「損失回避バイアス」と呼び、「プロスペクト理論」によって説明されています。
プロスペクト理論とは?
「プロスペクト理論」は、米国のダニエル・カーネマンらによって提唱され、行動ファイナンスや行動経済学と呼ばれる心理学の要素を応用した新たな経済学の分野を切り開いたとして、同氏は2002年のノーベル経済学賞を受賞しています。
プロスペクト理論によれば、「同じ金額の得と損があった場合、多くの人は損のほうを2倍以上大きく感じる」といわれています。
また、「人は利益はすぐ確定したがり、損失は先延ばししたがる」という傾向があるともいわれています。
そのため、「すぐに利確してしまって利益を伸ばせない」「損切りできず、損失が拡大する」といった行動は、理性の欠如ではなく、人間として自然な反応ともいえます。
つまり、感情とどう付き合うかがトレードの成否を分けることになります。
トレード中に注意すべき4大感情
トレード中に特に注意すべき感情は次の4つです。
- 欲望
「大ロットで一発で儲けたい」「もっと利益を伸ばしたい」 - 恐怖
「また負けたらどうしよう」「入ったらすぐ逆行する、誰かに見られてる気がする」 - 焦り
「チャンスを逃したくない」「今すぐエントリーしないと」 - 怒り
「なんでこんな動きするんだ!理不尽だ!」「連敗するなんておかしい!」
これらの感情を完全に排除することは不可能です。
だからこそ、「感情に配慮したルール設計」が必要になります。
メンタルによる典型的な失敗例
【勢いでエントリー:焦り】
「チャンスを逃したくない!」という焦りでエントリーした結果、資金管理やトレード戦略を考慮した内容にならず、損失を出してしまう。
【含み損耐性の低さ:恐怖】
含み損を抱えた瞬間に不安になり、本来の損切りラインに達していないのに手放してしまう。
このような「想定外の損切り」が続くと、資金管理が崩壊します。
【損切りルールの無視とナンピン地獄:損失回避バイアス】
「戻るはず」と損切りルールを無視してナンピンを繰り返し、含み損が膨らむ一方に。
これは損失を直視できない心理からくる典型例です。
【連敗によるフラストレーションで暴走:怒り】
連敗が続くと冷静さを失い、「取り返したい!」という思いでロットを増やしたり、無計画なトレードをして、損失が拡大していく。
【ポジポジ病:依存症】
「相場を見ていると入りたくなってしまう」といった一種の依存症のような心理から、根拠のないトレード繰り返してしまう。
【ポジれない病:恐怖】
負けが続いたあとに起こりやすく、チャンスが来ても恐怖でエントリーできない状態。
これもまた感情に支配された結果といえます。
【過信トレード:過信】
連勝中にありがちなのが「自分は相場が読めている」という過信。
トレードルールではなく自信だけを根拠にエントリーするので、資金管理が疎かになり、長期的には負ける可能性が高い。
メンタル管理の具体策
トレードルールの確立と徹底
「勝率×リスクリワードレシオ」などの資金管理を基本としたトレードルールを確立し、トレード時は必ず「ここでエントリー・利食い・損切り」と明確化できるようにする。
こうすることで感情に左右されずにトレードを行いやすくなります。
トレード記録をつけ、客観的評価と改善を行う
毎トレード後に、「勝敗・損益」「トレード前後で相場がどう動いたかわかるチャート」「トレード中の判断とその理由」などを記録し、蓄積した記録から「勝率×リスクリワードレシオ」を算出する。
その結果と残しておいたチャートを使いエントリー・利食い・損切り位置などの改善を行う。
トレード成績を見ながら、この作業を繰り返す。
これらの作業により、資金管理を基本としたトレードルールの確立やメンタル面の影響を受けた自分の行動パターンを把握することができます。
感情トレードの前提条件を把握して事前対策
自分が感情トレードに陥りやすいパターンを知りましょう。
- 連敗や積み上げた利益を吐き出した時、感情的になり根拠のないトレードを繰り返してしまう。
- 疲れていたり、ストレスが溜まっている時は、感情トレードに陥りやすい。
- 利益が先行すると気が大きくなり、無計画なトレードをやりがち。
このような自分特有のパターンを把握し、感情トレードに陥りそうなときは、意識したり、トレードを控えるなど、事前に対策を講じることも大切です。
休息や運動などで心身の状態や生活リズムを整える
心身が疲れていたり、生活リズムが崩れていたりすると、冷静な判断はできません。
休息や軽い運動を取り入れたり、心身の状態がよくないときはあえてトレードを休む勇気も必要です。
感情に負けないトレーダーになるために
自信と過信の違いを理解する
- 自信:自分のルールとプロセスを信じる。
- 過信:感覚や流れを過大評価し、ルールを無視する。
この違いを理解しておくことが、感情トレードに陥らないためのひとつの予防策になります。
勝ち負けより「良いトレード」を評価する
一時的な勝敗に一喜一憂するのではなく、「自分のルールに従えたかどうか」を評価基準にしましょう。
たとえ損失になったとしても、ルール通りに行動できたなら、良いトレードだと評価することが大切です。
どんなにすごいトレーダーでも全勝することは不可能です。
つまりトレードにおける損失は、ビジネスでいえば「必要経費」にあたります。
そのことを理解し、資金管理を基本としたトレードルールを確立し、そのルールに従ったトレードを積み重ねることが継続的に勝つためには重要です。
継続の中でメンタルは育つ
感情のコントロールは一朝一夕では身につきません。
失敗と反省を積み重ねながら、少しずつ感情との付き合い方を学んでいくようにしましょう。
「今日は感情的になったな」「冷静に対応できた」、こうした内省を繰り返すことで、少しずつ感情に負けないメンタルを育てていきましょう。
【トレード心理とメンタル管理】まとめ
メンタル面の安定がトレードの安定にもつながります。
- 基本的なトレード心理を理解する。
- 感情トレードの失敗例と前提条件を把握し、事前対策をする。
- 感情に振り回されないルールを確立し、徹底する。
トレードは、相場との戦いであると同時に自分自身との戦いでもあります。
ゆえに、メンタル面の安定は強い武器になります。
トレード心理を理解し、メンタル管理に重きを置いて、感情に負けず継続的に勝てるトレーダーを目指しましょう。

メンタル面の安定は強い武器だワン!